愛知県衛生研究所

手足口病に注意しましょう

最終更新日:2022年9月22日

1.どんな病気?

手足口病(hand, foot and mouth disease: HFMD)は、口の中や手足などに水疱性の発疹が現れる感染症で、ウイルスの感染によって起こります。主に乳幼児〜学童の間で夏に流行します。コクサッキーウイルスA16型(CV-A16)、CV-A6、CV-A10、エンテロウイルス71型(EV-A71)などが主な病原体で、不顕性感染(症状を起こさない)も存在します。しかし、乳幼児では原因となるウイルスに感染した経験のない者の割合が高いため、感染した子どもの多くが発病して症状を起こします。さらに原因となるウイルスが複数あるため、再発することも多いという特徴もあります。

2.感染経路

飛沫感染、接触感染、糞口感染(便の中に排泄されたウイルスが手指、食物、水等により媒介され口に入って感染すること)が知られています。特に、この病気にかかりやすい年齢層の乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは感染経路を踏まえた予防対策等の注意が必要です。

3.症状は?

名前の通り、手のひら、足底や足背、口の中などに水疱性発疹が現れます(典型的症状)。通常は数日の経過で自然治癒しますが、まれに髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症のほか、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺など、さまざまな症状が出ることがあります。特にEV-A71は他のウイルスより重症化する傾向があり、髄膜炎や脳炎の合併に注意が必要です。また、近年は上記の典型的な症状ではなく、全身性の発疹、回復後に爪の異常が認められるなどの非典型的な症状を示すCV-A6による手足口病も報告されています。

4.治療方法は?

手足口病に特効薬はなく、特別な治療方法はありません。また、基本的には軽い症状の病気のため経過観察を含め、症状に応じた治療となります。まれに重症化することもありますので経過を注意深く観察し、合併症に注意する必要があります。手足口病の流行は例年6月下旬〜7月上旬にみられますので、発熱を伴う水疱性発疹がみられる場合、早めの医療機関受診をお勧めします。

5.予防対策について

一般的な感染対策は、接触感染等を予防するために手洗いをしっかりとすることと、おむつ等の排泄物を適切に処理することです。アルコール消毒による効果が低いので、手洗いは流水と石けんで十分に行ってください。また、タオルの共用は避けて下さい。

手足口病に対する有効なワクチンは未だありません。近年では病原ウイルスの一つであるEV-A71に対するワクチンの開発が試みられ、中国や台湾で使用され始めていますが、日本ではまだ使用されていません。CV-A6など他のウイルスが原因となる場合もあり手足口病に対するワクチン予防は今後の課題です。

6.日本での発生状況

手足口病の報告数は、年によって大きく異なり、2011〜2019年では奇数年に報告数が多くなりました。2020年、2021年は新型コロナウイルス感染症による行動制限等の影響を受け、流行が抑制されていたと考えられています。2022年は行動制限が解除され、子ども同士の接触機会が増えたことから、流行の兆しが見られます(2022年9月現在)

7.愛知県での報告状況

愛知県においても手足口病は毎年発生報告があり、当所生物学部に搬入された病原体定点医療機関からの感染症発生動向調査患者検体のウイルス検索結果では、主な原因ウイルスはCV-A6、CV-A16及びEV-A71です。2020年、2021年は少ない件数で推移していましたが、2022年は9月時点で患者数が昨年度を超えており県内においても流行の兆しが見られます。

以下に過去の愛知県の手足口病患者からのウイルス検出成績を示します。

【手足口病患者からの主なウイルス検出成績】
2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022.9
時点
患者数 15 109 52 106 43 137 48 130 7 3 12
CV-A6 2 48 3 51 12 54 6 57 1 3
CV-A16 5 5 34 17 1 16 17 2
EV-A71 3 26 1 6 7 3
CV-A4 2 1
CV-A5 1
CV-A10 2 3 7 1 3

8.世界での報告状況

EV-A71による手足口病の流行は、これまでにもアジア各国で報告されています。マレーシア、台湾、中国、カンボジア、ベトナムなどでは、過去にEV-A71による死亡例を含む手足口病の大きな流行が報告されています。また、CV-A6による非典型的症状の手足口病の流行は、欧州、アメリカ、東南アジア地域などで2000年頃から報告されています。